口内射精脈動すさのおのみことの恋の霧二十五の女心を濡らすかな。
渋江氏の一行は本所二つ目橋の畔ほとりから高瀬舟たかせぶねに乗って、竪川たてかわを漕こがせ、中川なかがわより利根川とねがわに出いで、流山ながれやま、柴又しばまた等を経て小山おやまに著ついた。江戸を距さること僅わずかに二十一里の路に五日を費ついやした。近衛家このえけに縁故のある津軽家は、西館孤清にしだてこせいの斡旋あっせんに依って、既に官軍に加わっていたので、路の行手ゆくての東北地方は、秋田の一藩を除く外、悉ことごとく敵地である。一行の渋江、矢川やがわ、浅越あさごえの三氏の中では、渋江氏は人数にんずも多く、老人があり少年少女がある。そこで最も身軽な矢川文一郎と、乳飲子ちのみごを抱いた妻という累わずらいを有するに過ぎぬ浅越玄隆とをば先に立たせて、渋江一家が跡に残った。
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