巨乳幸福論人妻編玄関から御門ごもんまでの寝床も乾いてしまって水を欲しがって
文一郎は頗すこぶる姿貌しぼうがあって、心自みずからこれを恃たのんでいた。当時吉原よしわらの狎妓こうぎの許に足繁あししげく通って、遂に夫婦の誓ちかいをした。或夜文一郎はふと醒さめて、傍かたわらに臥ふしている女を見ると、一眼いちがんを大きく※(「目+爭」、第3水準1-88-85)開みひらいて眠っている。常に美しいとばかり思っていた面貌の異様に変じたのに驚いて、肌はだに粟あわを生じたが、忽たちまちまた魘夢えんむに脅おびやかされているのではないかと疑って、急に身を起した。女が醒めてどうしたのかと問うた。文一郎が答はいまだ半なかばならざるに、女は満臉まんけんに紅こうを潮ちょうして、偏盲へんもうのために義眼を装っていることを告げた。そして涙を流しつつ、旧盟を破らずにいてくれと頼んだ。文一郎は陽にこれを諾して帰って、それきりこの女と絶ったそうである。
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