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これに反してわたくしが多少積極的に得る所のあったのは、富士川游さんと墨汁師とのお蔭かげである。わたくしは数度書状の往復をした末に、或日富士川さんの家を訪とうた。そしてこういうことを聞いた。富士川さんは昔年せきねん日本医学史の資料を得ようとして、池田氏の墓に詣もうでた。医学史の記載中脚註に墓誌と書してあるのは、当時墓について親しく抄記したものだというのである。惜おしむらくは富士川さんは墓誌銘の全文を写して置かなかった。また嶺松寺という寺号をも忘れていた。それゆえわたくしに答えた書に常泉寺の傍かたわらと記しるしたのである。是ここにおいてかつて親しく嶺松寺中ちゅうの碑碣ひけつを睹みた人が三人になった。保さんと游さんと墨汁師とである。そして游さんは湮滅いんめつの期に薄せまっていた墓誌銘の幾句を、図らずも救抜してくれたのである。
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