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こういう人々の心持では、巌石の上に不朽の痕跡こんせきを止めることも、大人ならば不可能でないと思ったのであろうが、親しく実際についてみると、ほとんとその全部が山男たちの関与するところではなかった。大人足跡という口碑は、すでに奈良朝期の『常陸風土記ひたちふどき』大櫛岡おおくしおかの条にもある。丘壟おかの上に腰かけて大海の蜃おおうむぎを採って食ったといい、足跡の長さ四十余歩、広さは二十余歩とある。『播磨風土記はりまふどき』の多可郡の条にも巨人が南海から北海に歩んだと伝えて、その踰こゆる迹処あとどころ数々あまた沼を成すと記してある。そこで問題は我々の前代の信仰に別に大人と名づけた巨大の霊物があって、誤ってその名を山人に付与したのではないかということになるが、もしそうならばこれとともに足跡に関する畏敬いけいの情までも、移して彼に与えたことになるのである。すなわち羽後の農民などが足跡の砂を大切にしたのはむしろ山人史末期の一徴候で、事蹟が不明になったためにかえって一層これを神秘化したものでないかとも思われるのである。
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