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五百が鍛冶橋内かじばしうちの上屋敷へ連れられて行くと、外の家と同じような考試に逢った。それは手跡、和歌、音曲おんぎょくの嗜たしなみを験ためされるのである。試官は老女である。先ず硯箱すずりばこと色紙とを持ち出して、老女が「これに一つお染そめを」という。五百は自作の歌を書いたので、同時に和歌の吟味も済んだ。それから常磐津ときわずを一曲語らせられた。これらの事は他家と何の殊ことなることもなかったが、女中が悉ことごとく綿服めんぷくであったのが、五百の目に留まった。二十四万二千石の大名の奥の質素なのを、五百は喜んだ。そしてすぐにこの家に奉公したいと決心した。奥方は松平上総介かずさのすけ斉政なりまさの女むすめである。
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