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主客しゅかくは一である。主しゅを離れて客かくなく、客を離れて主はない。吾々が主客の別を立てて物我ぶつがの境きょうを判然と分劃ぶんかくするのは生存上の便宜べんぎである。形を離れて色なく、色を離れて形なき強しいて個別するの便宜、着想を離れて技巧なく技巧を離れて着想なきをしばらく両体となすの便宜と同様である。一たびこの差別を立りっしたる時吾人ごじんは一の迷路に入る。ただ生存は人生の目的なるが故ゆえに、生存に便宜なるこの迷路は入る事いよいよ深くして出ずる事いよいよかたきを感ず。独ひとり生存の欲を一刻たりとも擺脱はいだつしたるときにこの迷まよいは破る事が出来る。高柳君はこの欲を刹那せつなも除去し得ざる男である。したがって主客を方寸に一致せしむる事のできがたき男である。主は主、客は客としてどこまでも膠着こうちゃくするが故に、一たび優勢なる客に逢うとき、八方より無形の太刀たちを揮ふるって、打ちのめさるるがごとき心地がする。高柳君はこの園遊会において孤軍重囲のうちに陥ったのである。
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